農地に対する納税猶予の特例とは?手続き方法や注意点などを解説!
相続が発生して財産を引き継ぐ際に、相続税が課されることがあります。
引き継ぐ財産によっては相続税が高額になり、支払いに苦慮することも珍しくありません。
しかし農業用の土地に対しては、納税を猶予してもらえる制度があるのをご存じでしょうか。
この記事では、農業用の土地に対する納税猶予について、手続き方法や注意点を解説します。
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農地に対する納税猶予とは
農業用の土地を引き継ぐ際には、不動産登記のほかにもさまざまな手続きが発生します。
とくに税負担を軽減できる手続きは、支出を抑えるうえで重要なため、必ず押さえておきたいところです。
はじめに、農地などに対する納税猶予とは何か、概要を確認しておきましょう。
農地に対する納税猶予とは
農業は、国民の食を支える重要な産業であり、農地を守るとともに農業経営者を支援していく必要があります。
農業後継者による農業継続を促すために制定されたのが、農地に対する納税猶予です。
農地に対する納税猶予とは、農業を営んでいた被相続人から農地を相続した場合に、一定の相続税額の支払いを猶予するという制度です。
この制度は1975年の税制改正において創設され、数回の改正を経て現在の制度となりました。
具体的には、農業を営んでいた被相続人から相続によって財産を引き継ぎ、農業を継続して経営する間、相続税の支払いが猶予されます。
また、規定されている期日に達すると納税が「免除」となるため、農業経営を引き継ぐ方にとっては大きなメリットといえるでしょう。
納税猶予の対象となる農地
納税猶予の対象となるのは、被相続人の死亡日まで継続して農業に用いられていた農地です。
被相続人自身が作業に携わっていた農地のほか、特定貸付け農地も納税猶予の対象となります。
特定貸付けとは市街化区域外の農地を、農地中間管理事業もしくは農用地利用集積計画に基づいて貸し出す制度です。
畜産用の土地に関しても、採草または放牧を目的としたエリアは「採草放牧地」として納税猶予を受けられます。
灌漑(かんがい)用の溜め池や農作業場の敷地など、作物生産に直接使用しない土地は納税猶予の対象外です。
適用を受けるうえでの要件
特例措置の適用を受けるためには、相続人と被相続人それぞれが一定の要件を満たさなければなりません。
相続人の要件には、相続税の申告期限までに農業経営を開始かつ継続することなどが含まれます。
被相続人の要件としては、死亡日まで農業を継続している、または死亡日まで特定貸付けを継続していることなどが挙げられます。
猶予になる範囲
納税猶予の対象となった場合でも、相続税全額に対して適用されるわけではありません。
農地の納税猶予制度で猶予されるのは、通常の評価額による金額から農業投資価格を引いたあとの差額分です。
農業投資価格とは、農業の収入に見合うように国税局長が計算した農地の価格で、通常の評価額より低く設定されています。
相続税評価額は地域によって異なりますが、通常の評価額に比べて農業投資価格が100分の1以下になることもあります。
全額猶予になるわけではありませんが、負担を軽減するためにも、要件を満たす方は忘れずに利用しましょう。
猶予される期限
納税が猶予される期限は、農地の種類によって異なります。
農業振興地域や調整地区の場合は、「申告期限から20年を経過した日」または「相続人が死亡した日」が猶予期限です。
市街地区地域内の生産緑地については「相続人が亡くなるまで」と定められています。
農業振興地域・調整地区と市街地区地域内の生産緑地の双方を所有している場合、猶予期限は相続人が亡くなるまでです。
相続人が条件を外れない限りは納税の猶予は継続され、猶予期限の到来によって猶予された相続税が免除されます。
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農地に対する納税猶予を受けるうえでの手続き
続いて、納税猶予を受ける際に必要とされる手続きについて解説します。
手続きの流れ
まずは農地が所在する市町村の農業委員会から、継続して農業経営をおこなっている旨の証明書を発行してもらいましょう。
証明書を受け取ったら税務署で申請をおこないますが、その際は猶予額と利子税の合算額に見合う担保の提供が必要です。
次に、農業委員会の窓口に「相続税の納税猶予に関する適格者証明願」を提出し、現地調査へと進みます。
現地調査によって適格と判断されると「相続税の納税猶予に関する適格者証明書」が発行されるため、大切に保管しておきましょう。
その後は申告書類を作成し、相続税の納税猶予に関する適格者証明書とともに税務署へ提出します。
また上記の他にも、納税猶予の特例適用の農地の該当証明書や特例適用農地の明細書、担保提供書の提出も必要です。
相続税の申告期限
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内と定められています。
農業委員会による調査などを受ける必要があるため、早めに準備に取り掛かるようにしましょう。
申告時に必要な書類についても早めに確認・取得をし、余裕をもって手続きをすすめることが大切です。
納税猶予期間中における継続届出
納税を猶予してもらっている期間は、相続税の申告期限から3年ごとに「継続届出書」を提出する必要があります。
継続届出書とは、継続してこの特例の適用を受ける旨および、特例農地等に係る農業経営に関する事項を記載した書類のことです。
3年ごとに継続届出書の提出をしないと、納税猶予が打ち切られたり納税の免除を受けられなくなったりするためご注意ください。
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農地に対する納税猶予を受けるときの注意点
最後に、納税猶予を受ける場合の注意点を解説します。
離農すると猶予は打ち切りになる
農地に対する納税猶予は、農業用の土地を相続し、農業を経営する相続人に対して相続税を猶予・免除する特例です。
そのため、農業を終えた場合は猶予が打ち切りになり、猶予されていた税額に利子税を加えて納税しなければなりません。
農業を続けていても、猶予措置を受けている対象農地のうち、2割超を譲渡や貸付・転用・耕作放棄したときも同様です。
ただし療養などの理由により一時的に耕作できないケースについては、休耕地として扱われるため猶予は継続されます。
猶予を受けられるのは相続人のみ
納税猶予の対象は、農業を経営していた被相続人から農地を引き継いだ相続人に限ります。
親族などであっても、相続の対象者でなければこの特例は適用できません。
複数の相続人が同時に財産を引き継ぐケースでは、農業を経営する相続人のみ猶予を受けられます。
農業をおこなわない相続人に関しては、相続税を支払う必要がある点にご注意ください。
農業経営の継続が難しい場合は相談する
何らかの事情により農業を経営できなくなった場合は、特定貸付によって納税猶予の特例を継続することが可能です。
また「納税猶予適用農地等に係る営農困難時貸付け」も認められているため、事前に詳細を確認しておくことをおすすめします。
いずれも、認められるには一定要件を満たす必要がありますが、まずは農業委員会や税務署に相談してみましょう。
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まとめ
農業を営んでいた親が亡くなると、相続人である子どもはその農地を引き継ぐことになります。
相続後に継続して農業を営む際は、要件を満たすことで特例措置によって相続税の納税を猶予してもらうことが可能です。
特例措置の適用後も3年ごとに継続届出を提出しなければならないので、忘れないようにご注意ください。
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