相続分をプラスできる寄与分とは?要件や特別寄与料の概要を解説

山田 拓馬

筆者 山田 拓馬

不動産キャリア23年

不動産売買についての経験が豊富です。
様々なケースについて、お客様に寄り添った提案が出来るよう心掛けております。

相続分をプラスできる寄与分とは?要件や特別寄与料の概要を解説

被相続人(亡くなった方)の生前に、無償で財産の維持や増加などに貢献した場合、寄与分を請求できることをご存じでしょうか。
寄与分が認められれば相続分以上の遺産を受け取ることができますが、認められるにはいくつかの要件を満たす必要があります。
そこで、相続における寄与分とはなにか、認められる要件と特別寄与料について解説します。

相続分をプラスすることができる寄与分とは?

相続分をプラスすることができる寄与分とは?

被相続人(亡くなった方)の生前に、財産の維持または増加などに貢献してきた場合、貢献の度合いに応じて「寄与分」を受け取れる可能性があります。
ここでは、寄与分とはなにかについて解説します。

寄与分とは

寄与分とは、被相続人(亡くなった方)の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人に対して、相続分よりも多く遺産を取得できる制度のことです。
本来であれば、法定相続分にしたがって遺産を分けるのが一般的です。
しかし、相続人のなかには、被相続人を自宅で介護し財産の減少を防いだ方や、親の事業を手伝い財産を増やしたりした方など、さまざまな形で貢献した方もいらっしゃるでしょう。
そのような方がいる場合、その貢献を評価しないまま遺産分割をおこなってしまうと、不公平になってしまいます。
そこで、財産の減少を防いだり、増加に貢献をした方には、寄与分を認め相続分をプラスすることで公平を図ることができるのです。
つまり、被相続人に貢献した相続人は、遺産分割協議にて決定した相続分にくわえて、貢献の度合いによって寄与分を受け取ることができます。

寄与分は自ら主張し合意を得る必要がある

寄与分を受け取るには、ご自身で主張し遺産分割協議にて相続人全員の同意を得る必要があります。
また、主張したからといって、必ずしも認められるわけではありません。
話し合いが難航してまとまらない場合は、家庭裁判所へ申し立てをおこない調停で解決することになります。
遺産分割協議で話し合いがまとまらないケースでも、家庭裁判所を通すことにより円滑に話が進む可能性があるでしょう。
ただし、調停手続きは長期間かかることもあり、かつ平日に裁判所へ行く必要があるため注意が必要です。
なお、調停で不成立となった場合は、審判を利用することになります。
審判では、双方から提出された情報や事情などをもとに、寄与分を認めるかどうか判断されます。
このように、寄与分を主張しても必ずしもスムーズに認められるとは限らず、長期間かかる可能性もあるため注意しましょう。
話し合いにより寄与分について円滑に進めたい場合は、専門家である弁護士に相談しながら進めるのが望ましいといえます。

相続分がプラスされる寄与分を主張できる要件

相続分がプラスされる寄与分を主張できる要件

寄与分は誰でも主張できるわけではありません。
相続人の誰もが納得できるような貢献をしている必要があります。
ここでは、主張できる要件や請求の期限について解説します。

5つの要件

以下のような5つの要件を満たしている必要があります。
要件①相続人であること
寄与分が主張できるのは、原則として相続人だけです。
そのため、相続人でない親戚などが事業経営のための資金をサポートしたからといって、主張することはできません。
ただし、相続人と近い関係である配偶者などは、認められるケースもあります。
要件②財産の維持や増加に貢献した
たとえば、24時間つきっきりで介護や看護にあたることにより、医療費などを抑えられたような場合です。
このようなケースは、結果的に財産の減少を防止でき、かつ維持につながるため、認められる可能性があります。
主張がスムーズに認められるためにも、看護や介護していた経緯などがわかるように日誌などに記録しておくと良いでしょう。
要件③特別寄与をおこなった
特別寄与が具体的にどのようなものでなければならないと定められているわけではありませんが、特別に貢献した経緯があれば主張できるでしょう。
ただし、日常的に手伝いやサポート程度の行為、扶養義務の範囲内の介護などは認められない可能性が高いでしょう。
要件④無償で貢献した
被相続人への貢献を無償でおこなうことも要件の1つです。
事業などを手伝った際に、対価を受け取っていた場合は、主張できないため注意しましょう。
要件⑤一定の期間以上貢献していること
被相続人への貢献を数日おこなっていただけでは、認められないケースが多いでしょう。
認められるためには、一定期間貢献していることが大切です。

寄与分が認められる5つの型

寄与分として認められる行為は、以下の5つに分類されます。

●事業従事型:被相続人が経営する事業の手伝いをおこなっていた
●金銭出資型:被相続人への金銭の出資をおこなった
●療養看護型:被相続人の介護をおこなっていた
●扶養型:被相続人が生活するうえで必要な資金を援助した
●財産管理型:被相続人が所有する財産の管理をおこなっていた


上記の5つが代表的な行為であり、いずれも無償でおこなっている必要があります。

寄与分に時効はある?

寄与分に時効はありませんでしたが、2023年4月の民法改正により相続開始から10年以内と請求制限が定められています。
10年を経過すると寄与分は認められず、法定相続分にて遺産分割することになるため注意が必要です。

相続人以外でも寄与分が受け取れる?特別寄与料について

相続人以外でも寄与分が受け取れる?特別寄与料について

これまで、寄与分は相続人にしか認められていない制度でした。
しかし、2019年の民法改正により、相続人以外の親族の方でも寄与分を請求できるようになりました。
それは「特別寄与料」という制度で、一定の条件を満たすことで認められます。
ここでは、特別寄与料の概要について解説します。

特別寄与料とは

特別寄与料とは、相続人以外の親族の方が被相続人の生前に無償で貢献をした際に、相続人に寄与料を請求できる制度のことです。
たとえば、被相続人を実際に介護していたのは子の配偶者である妻であったにも関わらず、配偶者の妻は相続人ではないため遺産をもらうことができません。
そのため、子の配偶者である妻は、不公平とされてきました。
そこで、2019年の7月に施行されたのが「特別寄与料」です。
この制度により、相続人ではなくでも、被相続人の生前に無償で貢献している場合、寄与に応じた金銭を請求できるようになったのです。
ただし、特別寄与料を主張できるのは、被相続人の親族に限られます。
具体的には、六親等内血族と三親等内姻族とされており、内縁の妻および友人や知人は認められていません。

特別寄与料の注意点

特別寄与料を受けるには、相続の開始および相続を知ったときから6か月以内、または相続開始から1年以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
それ以後は、請求することができなくなるため注意が必要です。
通常の寄与料と異なり請求期限が短い点に気を付けなければなりません。
なお、相続人によるトラブルを回避するためには、弁護士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

まとめ

被相続人の事業を無償で手伝っていたり、献身的に特別に貢献していたような場合は、寄与料として相続分以上の遺産を受け取れる可能性があります。
また、2019年以降は、相続人以外の親族の方でも特別寄与料として請求することが可能となりました。
これらは、貢献した方への公平性を図るために制定された制度ではありますが、要件がいくつか用意されており、かつトラブルにもなりやすいため、弁護士などに相談しながら進めるのが得策でしょう。